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Journalジャーナル

ガーネットの王様とも言うべきデマントイドガーネット

Issue | 2019.08.01

「D」 = Demantoid garnet

1853年頃、ロシアの中央ウラル山脈の村で、眩い輝きを放つ緑色のガーネットが発見されました。その石こそが、デマントイドガーネット。ガーネットは、日本では「柘榴石(くろいし)」という名称で親しまれています。ダイヤモンドのような輝きを放つその石は、デマントイド(Demantoid)つまりダイヤモンド(オランダ語でDemant)に似た名前が付けられました。ダイヤモンドにも引けを取らない輝きを持つ、ガーネットの王様「デマントイドガーネット」の魅力を紐解きます。 Photo: Ikuo Kubota (OWL) / Text: Tomoko Katoh

デマントイドガーネットが「幻の宝石」と呼ばれているワケ

デマントイドガーネットはクロム元素を含み、緑色の輝きを放ちます。このクロムは、含有量が多ければ多いほど濃く鮮やかな緑色に。デマントイドガーネットは、ダイヤモンドに匹敵するくらいの屈折率の高い石。光の分散度が高く、稀少性もあることからガーネットの中で最も高く評価されています。その鮮やかな緑色は、かつてロシアの宮廷ジュエリーとしてもてはやされました。1875年頃からロシア革命によりロマノフ王朝が崩壊する1917年まで、王族や貴族の身につける装飾品を彩り凜とした存在感を放っていました。ロマノフ王朝が滅んだ後、デマントイドガーネットの採掘は途絶え、アンティークジュエリーの中で時々見かける程度の「幻の宝石」に。その後、時は流れ2002年頃、鉱山の再開発とともに再びデマントイドガーネットが採掘されはじめました。その昔、ロシア皇帝や貴族しか持つことが許されなかったという稀少性から宝石好きの間で熱い視線を集めまています。しかし、良質で鮮やかな緑色を放つデマントイドガーネットは極端に少なく、近い将来、再び「幻の宝石」となる可能性が高まってきています。

マダガスカル産のデマントイドガーネット

馬のしっぽと呼ばれる、美しい内包物(インクルージョン)

デマントイドガーネットは、「ホーステイル(馬のしっぽ)」と呼ばれるクリソタイルの細かい毛状のインクルージョンを持つのが特徴です。結晶の中心部から外側に向け、放射状やフラッシュ状に広がります。この美しい内包物は、世界でもロシア産のデマントイドガーネットにしか含まれていない非常に珍しいもの。そしてこの内包物は、馬を愛するヨーロッパの貴族階級の間で「幸運の象徴」として大変尊ばれました。

1月の誕生石として愛されるガーネット

宝石言葉では「真実・友愛・忠実」などを意味するガーネット。ガーネットと聞くと「赤」を連想する人も多いかもしれません。その深みのある赤色は、多くの人の心を魅了しています。かつてシャネルは、ガーネット色へのオマージュとして、ネイル「ヴェルニ ルージュ ヌワール」を発表。1994〜95年秋冬プレタポルテコレクションではモデルの指を彩りました。深みのある「赤」は、アイコンカラーとして今でも愛され続けています。このように「赤」のイメージの強いガーネットですが、「ガーネットの王様」と呼ばれるデマントイドガーネットは緑色の輝きを放ちます。ガーネットは赤はもちろん、他にもまざまな色があり、青以外のすべての色が存在するとも言われています。デマントイドガーネットは、古くから願望達成へと導いてくれると信じられてきました。そのため、知識・経験・精神性を持ち合わせた「持てる者の石」と呼ばれることも。今では、安定感と寛容さに溢れた、豊かな石として大切にされています。

シャネルの「ヴェルニ ルージュ ヌワール」

内包物(インクルージョン)に過度にこだわる必要はありません

エメラルド以外の石を測る場合、内包物は少なければ少ないほど価値が上昇してゆきます。エメラルドも例外ではないですが、目障りだと思うほど多く内包物が含まれている場合を除き、さほど気にする必要はありません。

エメラルドは緑柱石(ベリル)の一種ですが、不純物が全く含まれていないベリルは無色透明。クロムイオンやバナジウムが含まれて初めて、美しい緑色に輝くのです。そのため内包物はエメラルドにとって、なくてはならない存在なのです。また、内包物があることにより、石に入射した光が屈折。この屈折が、冷たい印象を与えがちなエメラルドに暖かみを添え、石の魅力を引き出しています。

デマントイドガーネットの色の価値

デマントイドガーネットは内包物の有無や形状、位置により評価が大きく左右します。この内包物以外の評価基準として重要なのは「色」。一言で緑色といっても、深い色から黄色味がかった色まであり、色の濃淡や透明度によって評価大きく左右します。デマントイドガーネットの中で、最も評価が高いされるのは純粋なビビットグリーン。そこから彩度が弱まるほどグレードも下がってゆきます。なお、緑色の他に黄色味や褐色の色が加わるものもありますが、純粋な緑色に近いほど評価は高くなる傾向に。非常に稀少価値の高い石なので、デマントイドガーネットに出会った際は、豪華絢爛な美しい緑色の輝きをお楽しみください。

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