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Journalジャーナル

艶のある色味と縞模様が人々を魅了するオニキス

Issue | 2019.08.01

「O」 = Onyx

古くからカメオ細工の材料として用いられてきたオニキス。オニキス特有の漆黒の艶やかな黒は、人々の心を惹きつけてやみません。世界最古のティアラとして知られるものにも使用されている他、世界各国でさまざまな言い伝えとともに存在感を示してきました。黒以外にも、鮮やかな紅色が特徴のサードオニキスが旧約聖書に登場するなど、地球の歴史とともに歩んできた過去を垣間見ることができます。長年人々に愛され、世界各地で産出されるオニキスについて紐解きます。 Photo: Ikuo Kubota (OWL) / Text: Tomoko Katoh

スウェーデン王室には世界最古の「カメオ・ティアラ」も

自ギリシア語の「爪(Onysis)」に由来する名前を持つオニキス。昔、白い筋のある瑪瑙をオニキスと呼んでおり、その筋目が爪に見えたことから「オニキス」=「爪」という名がつけられたと言われています。オニキスは世界各地から産出されており、様々な逸話が残されています。ヨーロッパではその吸い込まれるような「黒」に恐怖さえ感じ、「魔女の石」として恐れられていたことも。一方、中東では全てを飲み込んでしまうほどの濃い「黒」が悲しい出来事を運んでくると信じられ「悲しみの石」と呼ばれていました。中国では「不幸を呼ぶ石」とされ、誰1人触るものがいなかったとも言われています。場所が変わってインドでは、オニキスは修行を妨げる悪いものを取り除いてくれる石として崇められ修行僧が身につけることも。世界各国にオニキスにまつわる話が溢れているのは、それだけ多くの人々が「艶やかな漆黒」に心を奪われていた証拠ともいえるでしょう。

オニキスは二酸化ケイ素を主成分としており、モース硬度は6.5-7と比較的硬め。縞状に見え黒と白が綺麗に層状になっているものは、古くからカメオ(浮き彫りの装飾品)細工の材料として用いられてきました。スウェーデン王室に伝わる世界最古のティアラは、カメオを使用していることでも有名。もともとこの「カメオ ティアラ」は1809年、ナポレオンによってジョゼフィーヌ皇后に贈られたものです。7つの繊細なカメオを小粒のパールで縁取った、ゴールドが印象的な王冠です。現在は、皇后の孫であるスウェーデン王妃ユセフィナ・アヴ・レウクテンベリがティアラを引き継ぎ、スウェーデンおよびノルウェー国王オスカル1世と結婚した際に持参したため、現在はスウェーデン王室の所有となっています。このティアラは1961年、ドイツの美術史家ヨハン・ゲオルク・フォン・ホーエンツォレルン=ジグマリンゲンと結婚したスウェーデン王女ビルギッタから、2010年のヴィクトリア王女の結婚式に至るまで、カール・グスタフ王家の多くの女性が身につけています。

スウェーデン王室のティアラ

鮮やかな紅色と白色の縞模様が特徴のサードオニキス

オニキスは漆黒の黒をイメージする人も多いですが、オニキスとは「直線の白い縞目をもった石」を意味しています。8月の誕生石としてペリドットとともに知られているサードオニキス。鮮やかな紅色が印象的な石で、誕生石のもとになったと言われる旧約聖書に記された12種類の宝石のうちの1つです。古代ローマでは、赤と白の縞模様が多くの人から愛され、カメオとしてとても高い人気を得ていました。サードオニキスの語源は、ギリシア語。サードオニキスは加熱処理をする前は茶色をしていることが多く、ギリシア語の赤・茶色(sard)とかぎ爪(onyx)に由来しています。なぜ「かぎ爪」かという点ですが、美の女神「アフロディーテ」が眠っているときに、キューピットの矢によって彼女の爪がおられてしまい、それが石に変わったと言い伝えられているからです。この石は、旧約聖書にも登場し、お城の壁や胸のブローチに使われていたという記述が残っています。

赤や茶色、白色の線が見えることが特徴のサードオニキス。水晶と同じ石英種に含まれており、モース硬度は6.5-7。これは硝子に傷をつけられるくらいの硬さを指しています。通常は樹脂のようなマットな滑らかさですが、磨き上げることで硝子のような艶やかさを保つことが可能。丸く研磨すると縞模様が眼のように浮かび上がるという意味合いから「赤天眼石」と呼ばれることも。特徴的な縞模様は、2つとして同じものはないと言われています。サードオニキスは、メキシコやアルゼンチン・ドイツ・アメリカ・オーストラリアなどで産出するほか、日本でも青森県や北海道で産出が確認されています。出雲大社の御神体は、巨大なサードオニキスで出来ているという話もあります。サードオニキスは、高潔さと徳行を強め、協力な保護力を持つ石として古くから日本の人々に大切にされています。

古代ローマでは、女性は愛の女神の力を期待しカメオのネックレスとして、兵士たちはお守りとして愛用されていたようです

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