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Journalジャーナル

工房長 山本正彦 Vol.2
つくって終わりではなく、次に繋げられるジュエリーを製作したい

People | 2019.07.10

東京・日本橋、アイデクトの工房にて活動をつづける山本正彦。デザインからリペアまで、すべての技術が備わっているからこそ見えてくるジュエリーの可能性と、これから取り組みたいことについて聞いてみました。山本が思い描くのはつくって終わりではない、次に繋げられるジュエリー。その想いを掘り下げていきます。 Photo: Ikuo Kubota (OWL) / Text: Tomoko Katoh

決め手は、限られたお客さまへの贅沢品であったこと

これまでのキャリアで、ジュエリーデザインから製作まですべてに携わってきた山本は、2日で1つというペースで、オーダージュエリー製作をしていたこともあったと語ります。彼は、現在リペアを中心に活動していますが「目の前でつくって欲しいというお客さまからのご要望も多いので、ゆくゆくはアイデクトで1から手づくりジュエリーを仕上げてみたい」と語ってくれました。

山本がこの道で生きていこうと思った決め手は、「ジュエリーが限られたお客さまだけの贅沢品であったから。お客さまとじっくり話し、想像し、想いを形にする。それを届けられる人こそ『クラフトマンだ』」とやりがいを感じたと語ります。

以前「ハリーウィンストン」の職人気質や心意気、妥協しない強い想いに憧れを抱いていたことも。「当時は、日本の伝統工芸よりもヨーロッパに憧れていました。雰囲気から入り、その作品の先にお客さまがいる。感覚を作品に落とし込むのが好きです。コーヒーを飲みながらお客さまと会話し、その中でお客さまが言葉に出さなかったことまでを想像して形にする」。それこそがやりがいであり、楽しみだと笑顔で話しくれました。

クラフトマンから見る、日本と海外の違いとは

ジャパンクオリティーという点で、日本と海外では「表面加工の処理」に決定的な違いを感じるそう。「日本はテクスチャーや綺麗に磨く表面加工が得意。面を綺麗に出すこともできるので、ダイヤモンドのテーブル面などにこだわりが出ます。他にも、立て爪の技術は日本独自の技術と言えるでしょう。これに対し、海外は磨くのが苦手。傷があってもあえてデザインの一部として捉えたりもします」と語ります。

そんな山本は、以前、ステンドグラス職人になりたいと思っていたこともあるそう。光が入ることにより色味が変わる、ステンドグラスの奥深さに魅了されたうちの一人。ものづくりが好きなので、自身でステンドグラスを製作し友人にプレゼントしたことも。細かな技術や奥深さなど、「ステンドグラスのすべてが好き」と答えてくれました。

この感性は、現在のジュエリーに対する姿勢に通じる部分も。ジュエリーを扱う際、「ジュエリーは毎日つけたいもの。『高級=特別』なのではなく、安心感に包まれながら使って欲しい。だからこそ、装着感にはこだわっています」とコメント。見かけだけではなくその先までも想像し、大切にする根っからの職人気質が、今の仕事に活きているといえるでしょう。

お客さまに敬意を払い、大切なものを伝えてゆく

クラフトマンとしてキャリアを重ねてきた山本に、自身ならではのものを選ぶ時の基準について話を聞いてみると「斬新なものや奇抜でないものが好きです。使い心地がよく、デザインの何倍も良さを感じるものを選ぶようにしています。このデザインでここまですごいのか!と驚くようなものが好き。こだわりのあるものや機能美、見れば見るほど味のあるもの、使い心地の良いものに惹かれます」と自身のものづくりの想いに通じる答えをくれました。

そんな山本自身のエピソードとして、最近購入した『オメガ』のアンティーク時計のお話を聞かせてくれました。「自分が生まれたころの時計に出会い、アンティーク時計を購入しました。先日、メンテナンスに出したのですが、蓋を開けたら、そこにはかつてメンテナンスを行ったクラフトマンのメッセージが」。前回修理した箇所、気をつけておくべき箇所が記されていたそうです。それは50年前のクラフトマンからのメッセージ。「メッセージ性があり、次に残すという考え方は宝石と似ています」と振り返りました。

これから職人を目指す人には、「ものづくりは、手づくりのぬくもりが大切。ものに自身の気持ちを込めて欲しい」と語ってくれました。「お客さまの大切なものをお預かりする。その行為とお客さまに対して敬意を払い、ものに自身の想いを伝えるという意識を持って、しっかりと向き合って欲しい」とメッセージを残してくれました。

今後は、「デザインも担当し、自身で考案したジュエリーを製作し店頭展開してみたい。販売で終わるのではなく、その先を見据えたお付き合いをしていきたい」。オーダーは入口に過ぎず、その次の段階を想定したジュエリーをつくりたいと熱い想いを語ります。「例えオーダー品であっても、改作もするし石替えも承る。深いサービスを提供し、パーソナルで付き合っていきたい。石は天然のものなので、最後に自然に還るまでサポートしジュエリーで繋がるストーリーをつくりたい」と目を輝かせます。

最後に山本は「アイデクトは常にお客さま目線。押し売り的なアドバイスでなく、安心感を届けられるのが魅力。ジュエリー業界は言い値が多いですが、わかりやすい価格設定になっており、一流のプランナーやデザイナーがいるところが強み。価格によってサービスの差がなく、二重三重のチェックと効率をうまく生み出して安心感をお届けしています」と自信が携わってきたアイデクトの魅力を熱弁し、だからこそ「アイデクトでやりたいこと、やりたい想いが広がります」と笑顔でインタビュー会場を後にした。

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