ヴィクトリア時代を彩る華麗なるジュエリーの魅力

DATE : 2019.3.4
TEXT : Tomoko Kato

今でもたくさんの人々を魅了する英国・ヴィクトリア時代のジュエリー。この時代のジュエリーを紹介する展示会が、茨城県陶芸美術館で開催中です。豪華絢爛なジュエリーがそろうヴィクトリアン時代と、数々のアンティークジュエリーが会場を華やかに彩る展示会「愛のヴィクトリアン・ジュエリー」展の魅力について紐解きます。

激動の時代に誕生したヴィクトリアンジュエリー

現在でも、高い人気を誇るヴィクトリアンジュエリー。ジュエリー史の中で、最も威光を放つのはヴィクトリア時代と言っても過言ではありません。英国史上最長の64年に及ぶ在位を記録したヴィクトリア女王。彼女の統治下1837~1901年までに作られたジュエリーを、ヴィクトリアンスタイルと称しています。ヴィクトリアンジュエリーは特定の様式はなく、英国史上最も繁栄した黄金時代に誕生した富裕層階級をターゲットに、あらゆるジュエリーが誕生しました。そんなヴィクトリアン時代ですが、時代は大きく3つの時期に分かれています。

まずは1837~1860年頃、ヴィクトリア女王がアルバート公と結婚し英国に君臨した20年余を、「ヴィクトリアン初期」と呼んでいます。当時、稀少とされてきた「金」がカリフォルニアやオーストラリアで相次いで発見。そのため市場に出まわる量が多くなり、ゴールドジュエリーが隆盛を極めました。女王が蛇をモチーフにしたガーネットやトルコ石のネックレス、ブレスレットやリングを身につけ、次第に上流階級の流行りに。また貴族として名高いロスチャイルド家に女王が招かれた際、庭で失くした首飾りを鳩が見つけて小枝にかけたエピソードから、女王が鳩のブローチを愛用しました。これを象徴するかのように、鳩のジュエリーは「センチメンタルジュエリー」と呼ばれ、当時人気を呼びました。さらにこの時代は、英国王室御用達の宝石商も活躍し、素晴らしいジュエリーがたくさん誕生しています。中でも王冠を作った「ガラード」は非常に有名です。今でも、英国王室御用達のジュエラーとして、多くの作品を生み続けています。またナポレオンがカメオを愛好したことからヴィクトリア女王も好んで着用し、大流行したのもこの頃。今のカメオの原型は、この時代にインスパイアされたものがほとんどです。

ヴィクトリア女王(イギリス女王)1819年5月24日 - 1901年1月22日

当時は英国人の多くが海外旅行へ訪れるようになり、海外のジュエリーにも大きな影響を受けました。その関係で、フランス・イタリア・スコットランドのジュエリーも流行。モーニングジュエリーとして、この時期にジェット(黒玉)が流行始めました。一方で9K、12K、15Kなどのゴールドも合法化され、一般庶民にもゴールドがグッと身近になった時期でもありました。

次に1861~1885年、「ヴィクトリアン中期」と呼ばれる時代。1867年に南アフリカでダイヤモンド鉱山を発見されました。ヴィクトリア女王がインド皇帝に即位した1877年、大英帝国が絶頂期を迎えるとインドからゴールドやパールが大量輸入。このことで、人々の宝飾品への関心度が飛躍的に高まったと言われています。しかし1881年、アルバート公が死去し女王は長期間の喪中に入りました。このとき女王自身も側近、モーニングジュエリーとしてのジェットを率先して着用したことから、一時は製造が間に合わないほどの需要をもたらし国中で大流行になりました。

最後に1886年~1901年の「ヴィクトリアン後期」。大英帝国の植民地から膨大な富の還元によって、大衆消費社会が現出しました。機械化が促進され、ジュエリーが大量生産されるようになった時代。どれも似たような画一的なデザインと、大量生産による低品質なジュエリーが大衆に供給されるようになりました。一方で、この風潮に反動してアーツ・アンド・クラフト運動も盛んに。これは19世紀末に起こった工業化・大量生産による美術品の品質低下を懸念して、中世ギルドに近い手作業による作りを重視したもの。素材よりもデザインと手作りの素晴らしさを訴えるジュエリーの創作運動が非常に盛んになりました。

このようにビクトリアン時代はジュエリー史上最も華やかな時代であるとともに、激動の時代背景から多くのジュエリーの原型が誕生した時代でもありました。時間をかけて制作する煌びやかなジュエリーは、当時の最高峰の職人によって作られたもの。現代の宝飾技術を持ってしても再現不可能なものがたくさんあると言われています。

劇場公開日 2019年1月25日作品 「ヴィクトリア女王 最期の秘密」

豪華絢爛なジュエリーがそろう「愛のヴィクトリアン・ジュエリー」展

茨城県・笠間市にある茨城県陶芸美術館で3月10日まで、「愛のヴィクトリアン・ジュエリー」展が開催中です。ヴィクトリア女王が在位した19世紀ヴィクトリア時代は、イギリスの歴史の中で最も輝かしい時代。この時代のジュエリーの数々と華やかな生活様式は、今日でも多くの人を惹きつけています。同展示会では、英国王室にまつわる宝飾品や著名なコレクションなど、ヴィクトリア時代を中心に、技巧を凝らした金や銀、ダイヤモンドや象牙など多様な素材を用いたジュエリーを紹介。また会場には、当時のウェデイングや亡き人を偲ぶためのモーニングの装いや、英国文化として広く浸透してきたアフタヌーンティーの豪奢な銀器によるテーブルセッティングも。繊細な模様を手仕事で仕上げたアンティーク・レースなど華麗なる英国文化が顔をそろえる他、1830年頃の「ピンクトパーズ&カラーゴールドスウィート」「エメラルド&ダイヤモンド ゴールドセット」のネックレスや、「ターコイズ&ゴールドブローチ」、19世紀初頭の「シルバーパールティアラ」、ダイアナ妃のダイヤモンドリングなどが並びます。

中でも、1820~30年頃の「リガードパドロックペンダント」(ルビー・エメラルド・ガーネット・アメジスト・ダイヤモンド・パール・トルコ石)は、19世紀初期のセンチメンタルな装身具を代表する作品。パドロック(錠前)はとらえられた愛情を意味し、表面には当時流行の宝石による文字遊びであるREGARD(アルファベットの順番に宝石の頭文字を並べたもの)で、敬愛を意味する装飾が施されています。中央の真珠とトルコ石で忘れな草の花を表し、花言葉により「私を忘れないで」という思いを込めたメッセージジュエリー。金台には、カラーゴルドによる精巧な細工がされ、さまざまな宝石と色彩のコントラストを楽しめます。

もう1つの作品である1880年頃の「エナメル&サファイア ダイヤモンドネックレス」は、ルネッサンスジュエリーにインスピレーションを得て、エナメル技法の復刻で19世紀を代表する作家となったカルロ・ジュリアーノの作品。白と黒の精緻なエナメル細工、サファイア、ダイヤモンドの成功なセッティング、そして天然真珠を贅沢に用いた落ち着いた印象のネックレスは時代を代表する逸品です。

会期終了までは残りわずかですが、豪華絢爛なヴィクトリアン・ジュエリーを一度に目にすることのできるまたとないチャンスなので、ぜひ足をお運びください。

展示会詳細
展示会名:愛のヴィクトリアン・ジュエリー
会期:平成31年1月2日(水)〜3月10日(日)
会場:茨城県陶芸美術館 地下1階企画展示室
開館時間:午前9時30分〜午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日

ターコイズ&ゴールドブローチ
1830年頃 イギリス
穐葉アンティークジュウリー美術館蔵

シードパールティアラ
19世紀初期 イギリス
穐葉アンティークジュウリー美術館蔵

リガードパドロックペンダント
1820-30年頃 イギリス
穐葉アンティークジュウリー美術館蔵

エメラルド&ダイヤモンド ゴールドセット
1830年頃 イギリス
穐葉アンティークジュウリー美術館蔵

エナメル&サファイア、ダイヤモンドネックレス
1880年頃 イギリス
穐葉アンティークジュウリー美術館蔵

ダイアナ妃のダイヤモンドリング
1985年 フランス
穐葉アンティークジュウリー美術館蔵

ティーセット
(トレー・ティーポット・コーヒーポット・クリーマー・シュガーポット)
1860-61年 ロンドン
穐葉アンティークジュウリー美術館蔵

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