ジュエリーで旅する世界のブランド Vol.4 Chaumet

DATE : 2019.5.10
TEXT : Tomoko Kato

1780年にパリで創業し、間もなくナポレオンの皇后ジョゼフィーヌ御用達ジュエラーとなったショーメ。ショーメは、フランスの歴史とともに歩んできた世界的ジュエラーと言っても過言ではありません。ひとつひとつのジュエリーは、細部にまでこだわりの詰まった職人技の賜物。ヴァンドーム広場のアトリエで命を吹き込まれるジュエリーには、ショーメならではの磨き抜かれたセンスが凝縮しています。

ブランドの象徴でもある豪華絢爛なティアラ

現在、パリ・ロンドン・東京・北京・モスクワを始めとする世界主要都市に80以上のブティックを展開しているショーメ。技と贅と美を極めてきた230年以上に及ぶ長い歴史を紡いでいます。ショーメと言えばブランドのシンボルである芸術性と独創性に富んだ「ティアラ」を思い浮かべる人も少なくないはず。事実ショーメは創業以来、2,000を超えるティアラ制作を手がけてきました。

ショーメのティアラは、アーカイブに収められたデッサンからロマン主義・自然主義・アール・デコといったさまざまな様式の影響を受けていることが読み取れます。ティアラは、ニッケルシルバーで立体模型を作る特殊技術を採用。この工程を経ることで、個々の頭の形に合わせた制作を可能にしています。ショーメの博物館には豊かな創作技術を物語る700点余りのティアラの模型が収められており、まさに圧巻という光景。ティアラの制作は、成形・解体から研磨・刻印・組立て・仕上げなど数多くの段階を必要とし、それぞれの過程に卓越した職人技が凝縮されています。

これまでショーメが制作したティアラは、多くの王侯貴族の結婚式に用いられました。由緒正しき伝統と卓越した技術を受け継ぐブライダルコレクションは、大切な人との絆を象徴する「リアン・ドゥ・ショーメ」コレクションや、ナポレオンの最愛の皇后ジョゼフィーヌをイメージした「ジョゼフィーヌ」コレクションのように感情豊かで親密な愛のメッセージが込められています。ヴァンドーム広場のアトリエでひとつひとつ丁寧に作られるジュエリーは、世界中の女性の憧れの的。これからも世界中の花嫁にとって、幸せのシンボルとして熱い視線を集め続けることでしょう。

麦の穂のティアラ フランソワ=ルニョー・ニト 1811年頃

成長のキッカケはナポレオンの馬車馬

ショーメは1780年、マリ=エティエンヌ・ニトによりパリのサントレーノ通りに小さな宝石店として創業しました。ある日突然、店の前でナポレオンの馬車馬が暴れ出し、創業者と店員がナポレオンを救出。それがキッカケで、戴冠式に用いる宝冠の製作をナポレオンから依頼を受けたことがショーメとナポレオンの運命的な縁の始まりだと言われています。ナポレオンは、ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ、そしてマリー=アントワネットの又姪にあたるハプスブルク=ロレーヌ家のマリー=ルイーズとの婚礼のために、ショーメに豪華な宝飾品を注文。やがて、皇帝ナポレオン1世から王室御用達宝石商に認定され、フランスが誇る名門ジュエラーの地位を揺るぎないものにしてゆきます。

ナポレオン失脚後、店は創業一族の手から離れ経営者が変わります。1834年に宝石職人ジャン・ヴァレンティン・モレルを店に迎え、1848年イギリス・ロンドンに支店を出すとルイ・フィリップをはじめとする王侯貴族の支持を得て、やがてヴィクトリア女王の御用達宝石商に。1885年には、ジョゼフ・ショーメが店名を「ショーメ」とし従来のデコラティブだったデザインの伝統に自然の素材や美しさ、アーティストの感性を重視するスタイルを取り入れ、現代のジュエリーの基礎を築きました。その後、ショーメは1900年のパリ万博を皮切りに国際博覧会すべてに出品。数々のグランプリを受賞します。1907年パリのヴァンドーム広場12番地に店舗を構える五大宝飾店(グランサンク)の一つに認定され、世界に名を轟かすジュエラーとして成長していったのです。

時間はメゾン方程式の大切な要素

ショーメのジュエリーは、丁寧にデッサンするところから始まります。時間をかけて描かれたデッサンをもとに宝石鑑定士がストーンを選別。品質や希少性はもちろん、インスピレーションを大切に選ばれたストーンは、ブリリアントカットやエメラルドカット、またはメゾンを代表するペアシェイプカットなどの加工を経て、原石に光が与えられ輝き始めます。デッサンから完成までの各工程には、研磨職人やセッティング職人など複数人の手を経て命が吹き込まれてゆきます。

時間はメゾンにとって最も大切な要素のひとつ。職人たちはひとつの作品を作り上げるのに2000時間以上かけることも珍しくありません。膨大な時間をかけて生み出されるすべてのコレクションは、ヴァンドーム広場の工房で誕生します。創造性と革新を生み出すこのアトリエでは、正確で細やかな手作業が保障され、熟練の職人が伝えてきた卓越した技術が受け継がれているのです。

また国内では、昨年6月にショーメ銀座本店がリニューアルオープンしたのも記憶に新しい出来事。当日は特別ゲストに女優の桐谷美玲さんを迎えテープカットセレモニーを行いました。桐谷さんは総額1億5000万円を超える豪華ジュエリーに身を包み華やかに登場。会場の視線を一気に集め、話題となりました。昨年行われた第71回 カンヌ国際映画祭では、女優のキャリー・マリガン、バルバラ・レニー、トップモデルのマルゴシア・ベラがショーメのジュエリーを着用。オープニングセレモニーに登場したスペイン出身のバルバラ・レニーが身に纏った「ジョゼフィーヌ」コレクションのイヤリングとブレスレットはひときわ存在感のある眩い輝きを放っていました。ショーメ初のミューズである皇后ジョゼフィーヌに捧げるジュエリーコレクションは、タイムレスな輝きを放ち、今なお世界中の人々に愛されています。

「ジョゼフィーヌ」コレクション

1804年(後世に数回修正)に出席した教皇ピウス7世への謝意としてナポレオンより贈呈されたティアラのイメージムービー。 ナポレオンの最初の妻であり、ショーメ初のミューズである皇后ジョゼフィーヌも登場