Loading...

Journalジャーナル

海に沈む宝石、奇跡の色彩美を持つ珊瑚

Issue | 2019.08.01

「C」 = Coral

底深い赤や華やかなピンク、雪のように純白な色合いなどさまざまな表情を見せる宝石珊瑚。その天然の美しさは古くから世界中で愛されてきました。日本では3月の誕生石や結婚35周年のお祝いのプレゼントとしても人気の高い宝石として知られています。今では絶滅危惧種として保護の対象となっており年々希少性が高まる珊瑚ですが、大自然が長い年月をかけて育んだ珊瑚の魅力を紐解きます。 Photo: Ikuo Kubota (OWL) / Text: Tomoko Katoh

海が独力で作り上げる奥深い魅力

一言で珊瑚と言っても、種類はさまざま。中でも、宝石として用いられる珊瑚の一つに「八射サンゴ」があります。本来、光の届かない深海で育つ珊瑚ですが、それを思わせないほど鮮やかで優しく美しい色を放ちます。珊瑚は、サンゴ虫というポリプ(個虫)の群体で、深海でひっそりと生息するもの。1cm成長するのに約50年かかる種類もあるほど、ゆっくりと長い歳月を掛けて成長します。同じ海で作られ愛される「真珠」が人の知恵を借りて作られた宝石ならば、珊瑚は海という自然が独力で作った奇跡の贈り物。優しく柔らかな表情が美しい自然を想像させてくれるのも愛される理由の一つです。

珊瑚はギリシャ神話にも登場しており、そこには珊瑚のはじまりが書いてあります。昔、アルゴスの王が、自身の一人娘であるダナエの子に殺されるという神からのお告げを受けます。そこで王は娘を塔に閉じ込めてしまいましたが、後に全能の神ゼウスが娘を奪います。その2人の間に生まれた男児がペルセウス。大きくなったペルセウスは、正義感が強く妖怪退治に乗り出します。そこで出会った妖怪がかの有名なメドゥーサ。蛇の髪の毛を持ち、その姿を見ると石に変えられてしまうと言われている妖怪です。ペルセウスはメドゥーサと戦い、見事メドゥーサを倒します。その時「メドゥーサの首から地中海に滴り落ちた血こそ、珊瑚のはじまり」とギリシャ神話に記されています。

そんな神話のある珊瑚ですが、産地は色によってさまざま。主に地中海・アフリカ沿岸・紅海・マレーシア・そして日本が有名です。赤の色が濃く鮮やかな血赤珊瑚は、「オックスブラッド」とも呼ばれ特に人気が高く、世界中のジュエリーコレクターの注目の的。まるで人魚の唇の様な艶やかさを持つ血赤珊瑚は、日本が誇る特産品の一つです。そんな血赤珊瑚は、日本の小笠原諸島や五島列島、奄美黄島が産地として知られています。もともと中国や台湾で、赤は縁起の良い色とされている人気の色。中国・台湾の富裕層から赤珊瑚人気の火がつき、需要の増大とともに、年々その取引価格も大幅な値上がりを見せています。

サンゴの原木

珊瑚の価値の決め手となるのは?

暗い赤色から淡いピンク色まで幅広い色味を持つ珊瑚。「赤」の色味が濃くなるほど、価値が高くなると言われています。高知県の土佐湾で生産される珊瑚は、本物の血にも似た鮮やかさを持ち世界的にも希少性が高く、珊瑚の最高級品として知られています。またフ(白い斑点や模様のこと)や色むらがなく色調が単一なほど価値が高いとされています。反対にマーブル模様や、白濁があると価値を下げてしまう要因に。また自然界で創り出される天然の珊瑚は表面にくぼみや傷がありますが、これも価値を下げてしまう要因の一つ。表面がより滑らかで艶やかなものほど価値が高いとされています。虫食い珊瑚やヒ(ヒビ)があるものも価値が下がってしまいます。珊瑚を選ぶ際はこの部分に着目して選ぶように注意しましょう。

また米パントン(PANTONE)が毎年発表する、「カラー・オブ・ザ・イヤー(Color of the Year)」。これは2000年から発表をスタートした、年ごとのテーマカラーを示すものでアートやファッション・美容・エンターテイメント・経済など綿密なトレンドリサーチの上で決められています。気になる2019年ですが、テーマカラーは「Living Coral」。「Living Coral」の色は、ゴールドトーンをベースにしたソフトなコーラルカラーを指しています。パントンの公式インスタグラムには、海の中のサンゴ(=コーラル)と同色の魚が映った動画が投稿され、注目が集まっています。

珊瑚で遊ぶメイクとファッション

年齢やシーンを問わず世代を超えて愛用される珊瑚は、日本人の肌色にも合わせやすく親しみやすいのが魅力。意外な組み合わせではありますが、和装の際、珊瑚の帯締めを使用するのもお勧めです。シンプルで柄は控えめ、上品さを演出する着物は、帯アレンジでさまざまな表情が楽しめます。着物ならではの桜や蟹・金魚・楓・雪など季節感溢れる帯に、珊瑚の帯締めを合わせれば一気に女性らしい優しい印象に。優しげなコーラルカラーは、着物の良さをより一層引き立てます。

メイクでも、今年のテーマカラーであるコーラルを取り入れると一気に春めいた表情に。ここ数年人気のヌーディメイクですが、今年は艶感が控えめになる予想。色感は残しつつ余分な艶っぽさを抑えるために、リップは指で軽く押さえながらつけるのがお勧め。これからの季節、春夏ファッションの中にお気に入りの珊瑚ジュエリーや、コーラルカラーメイクを取り入れることで、いつものコーディネートをアップデートしてみてはいかがでしょうか。

ピンク珊瑚のネックレス

土佐沖の赤珊瑚のジュエリー

正しい知識が珊瑚の美しさを保つ秘訣

天然の有機質起源の宝石である珊瑚は一度変色してしまうと元に戻すことはできません。希少価値の高い珊瑚といっても、人工的な傷や汚れは価値を下げてしまいます。そのため、正しくお手入れすることが大切なポイントとなってきます。珊瑚は硬度が低いので、衝撃に弱く簡単に傷ついてしまうことも。指輪など他のジュエリーを身に着ける際はぶつけたり、擦ったりしないように注意しましょう。また熱にも弱いので高温の場に放置することや、暖房機器には特に注意が必要です。

天然の珊瑚には「むし孔」という小さな穴や、目に見えない無数の空洞が存在します。その中に水分が入ってしまうと成分が溶け出したり、変質する原因に。万が一水分が付着した際は、すぐに柔らかくて清潔な布で乾拭きするように意識しましょう。また珊瑚の主成分「炭酸カルシウム」は酸に溶けやすい性質を持っています。そのため人間の汗や果汁・化粧品が付着することで珊瑚の表面を変質させてしまう危険性も。珊瑚を身につける際はいつもより少し丁寧に。自分らしいコーディネートを楽しみましょう。

Contactお問い合わせ

お電話・メールにて各店舗にお問い合わせください。

東京

神奈川

千葉

埼玉

大阪