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Journalジャーナル

美の極致、ファンシーカラーダイヤモンド

Issue | 2019.08.01

「F」 = Fancy color diamond

ジュエリーとして絶大な人気を誇るダイヤモンド。その中に、非常に稀な確率で無色透明とは明らかに異なる美しい色を帯びたダイヤモンドが混ざることがあります。これこそが天然のファンシーカラーダイヤモンド。稀少価値が高く、無色のダイヤモンドを凌ぐ評価が下されることも珍しくありません。多くの人々を魅了し、美の極致と言っても過言ではない、ファンシーカラーダイヤモンドの魅力に迫ります。 Photo: Ikuo Kubota (OWL) / Text: Tomoko Katoh

カラーストーンのような位置付けにあるファンシーカラーダイヤモンド

ダイヤモンドと言うと、無色透明な石を思い浮かべる人も少なくありません。しかし、非常に稀な確率で、無色透明とは明らかに異なる美しい色を帯びたダイヤモンドが産出されることも。これらは一般的には、ダイヤモンドとは別にファンシーカラーダイヤモンドとして分類され、カラーストーン的な位置付けとなっています。

ファンシーカラーダイヤモンドは、ダイヤモンド同様、硬度10と非常に硬く万物の中で最も硬いものとして存在します。この類稀な鉱物を美しい宝石へと昇華させたのは、奇跡とも言うべき人間の技術。精密なカットを施すことで、光を受けて煌く美を石の中に閉じ込めることを可能にしました。

ブロンドのセックスシンボルにより一躍有名に

皆さんは「バローダの月」と呼ばれるファンシーカラーダイヤモンドをご存知でしょうか?マリリン・モンローが身につけて映画「紳士は金髪がお好き」に出演し、一躍有名になった宝石です。もともと、この「バローダの月」が採掘されたのは、インド北西部にあるバローダという街。採掘された石は、まさに月のような輝きを放つ美しいダイヤモンドでした。このダイヤモンドは発掘当時、王族であり土地の所有者であったエクワド家の手に。長い間王家の家宝として秘蔵されていました。

時が流れ18世紀、「バローダの月」は、ローマの女帝マリア・テレジアの手に渡りました。もともとマリア・テレジアの父がエクワド家と交流があり、その縁でマリア・テレジアが「バローダの月」を手に入れたと言われています。彼女は宝石好きとして知られる女帝で「バローダの月」のことも愛していました。しかし、第一次世界大戦で「バローダの月」は行方不明に。

そこから数年人々の前から姿を消していた伝説のファンシーカラーダイヤモンド。「バローダの月」は1953年、大女優マリリン・モンローが身につけたことで、再び世界の脚光を浴びました。当時、「バローダの月」を所有していたのは、デトロイトの宝石商メイヤー・ローゼンバウム。彼は宣伝のため、マリリン・モンローに「バローダの月」を身につけさせ、映画「紳士は金髪がお好き」に出演させたのです。マリリン・モンローの人気も後押しし、「バローダの月」の知名度は急上昇。世界中の人々から、熱い視線を浴びることとなりました。

「バローダの月」を身につけたマリリン・モンロー

ファンシーカラーダイヤモンドは色が重要

ファンシーカラーダイヤモンドの財産的価値は、稀少性と密接な関係を持っています。ファンシーカラーダイヤモンドが採掘される確率は、一般のダイヤモンドと比較して、非常に低い数字になっています。中でも良質で稀少価値の高い石となると、価格が天文学的数字になるものも。一般的なダイヤモンドの価値を決定するのは、アメリカの宝石学会(GIA)が定めた4Cと呼ばれるカラー(色)、クラリティ(透明性)、カット、カラット(重さ)。これに対し、ファンシーカラーダイヤモンドを評価する際は、色が最も重要視されます。

一言でファンシーカラーダイヤモンドと言っても、ブルー、ピンク、イエロー、ブラウンからパープル、グリーンまで幅広く存在します。この中で最も評価が高いものはブルーのダイヤモンド。別名「魔性のダイヤモンド」と呼ばれ、市場に出回ることはほとんどありません。現在、アメリカ・スミソニアン博物館に展示されている伝説の「ホープダイヤ」もブルーのファンシーカラーダイヤモンドです。市場に出回っているブルーダイヤは、ほとんどが人工的に処理されたものなので、天然のブルーダイヤに出会える確率は奇跡と呼んでも過言ではないでしょう。

ブルー同様、稀少価値が非常に高い色はピンクです。1カラット以上の大粒のものは年間で数十個、2〜3カラットとなると年間数個しか採掘されません。天然のファンシーカラーダイヤモンドの価値基準は、色石同様「カラー(色)」を第一主義とし、そこに透明度や輝きをプラスして評価しています。

かつては世界最大のダイヤモンド「コ イ ヌール」

次々と高額で落札されるファンシーカラーダイヤモンド

ファンシーダイヤモンドは、稀少性が高く非常に高値で取引されます。過去にはハリーウィンストンが、3.2gのファンシービビットダイヤモンドを約25億円で落札。昨年11月には、同じくハリーウィンストンが「ピンクレガシー」と呼ばれる18.96カラットにの大粒のピンクダイヤを約57億円で落札し、世界の注目を集めました、この額は、ピンクダイヤのカラット単位で過去最高額となっています。

「ピンクレガシー」は、色付きダイヤモンドのグレードで10万個に1つの鮮やかさを示すファンシービビットに分類。10カラットを超えるファンシービビットのピンクダイヤは、他にほとんど例がありません。この出品者は公表されていませんが、ダイヤ大手デビアスを経営していたオッペンハイマー家が所有していたとも言われています。「ピンクレガシー」は、ハリー・ウィンストンが落札したことで「ウィンストン・ピンク・レガシー」に名称変更されました。世界のピンクダイヤの9割を産出するオーストラリア・アーガイル鉱山は、2020年に閉鎖される見通しで、ダイヤも価値が今後さらに上がることが予想されます。

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